活断層と地震(金子史郎著, 中公文庫, 中央公論新社)

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1995年の阪神淡路大震災の年に書かれた本であり、熊本地震(2014)を受けて復刊された本(現在はまた品切れだが)。そのため第1章は神戸周辺の活断層動向の概説という速報的な章であり、読みごたえがある。共役断層の概念を簡単に示したあと、日本各地の活断層像が写真や歴史記述なども交えて述べられる。

地震は断層のずれにより発生するという断層地震説が、当初は自明な説ではなかったという点が述べられているのは興味深い(この点については根尾谷の地震断層観察館を訪れた際の旅行記も参照)。ただ、それについてもう少し踏み込んで、発震機構のシングルカップル説vs.ダブルカップル説の対立と解決まで描いていれば、物理学的な活断層像や共役断層の概念がよりはっきりしたのではないかと個人的に思った。

予知への展望を述べる章もあるが、地震学は阪神淡路大震災以後も東日本大震災(2011)など多くのイベントとそれを受けた紆余曲折があった。1995年当時の地震観に対する、現在からの答え合わせという読み方もできそうだ。

書誌情報

https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784122023963 (紀伊国屋書店Web)