M8.0の痕跡を訪ねて根尾谷へ 岐阜県本巣市

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 最後に樽見に戻り、淡墨桜を見に行った。この淡墨桜は本巣市のシンボルとも言える樹齢1500年のエドヒガンの巨木である。その名前は、花の散り際に花びらが薄墨色に変化することから名づけられたという。

 淡墨桜は根尾川の河成段丘面にあり、そこまでは斜度10%はある激坂を上る必要があった。息を切らして段丘面に辿り着くと、その中央に囲いをなされて淡墨桜は存在した。その大きさは圧倒的である。古来より名所であった淡墨桜は、昭和初期に枯死の危機を迎えた。しかし、根継ぎなどの懸命な治療を施された結果復活を果たし、今でも春になると満開の花びらを付けるという[8]。その時期に訪れることはできなかったが、老木にもかかわらず葉の茂りはいかにも旺盛であり、それだけでも見られてよかった。樹木のもつ生命力は底知れない。この旅をして、桜に限らず年月を経た樹木への尊敬が深まったと思う。

 この後立ち寄った淡墨桜のすぐそこにあるカフェの店主は、「春はすごい人です」と話していた。あれから初めての春を迎えたが、淡墨桜や、樽見鉄道の沿線の桜がはなやかになるときも訪れたのであろう。その風景を想像しながらこの旅行記を書いている。

 根尾谷断層に淡墨桜と、自然への驚異を覚える旅であった。それと同時に、 身を砕きつつも自然と付き合う根尾谷の人々の姿をそこに見た。見逃した名所などもまだあり、時間が許せば、根尾谷のさらに上流まで行きたかった。樽見鉄道にもまた乗りに来たい。いずれその機会があることを信じている。

参考文献など