M8.0の痕跡を訪ねて根尾谷へ 岐阜県本巣市

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 大垣駅から第三セクター鉄道・樽見鉄道に乗る。樽見鉄道は1984年、国鉄樽見線を引き継いで設立された。その当初は大垣駅から神海駅(本巣市)までの区間のみであったが、1989年には神海駅から樽見駅までの根尾川に沿った区間が開業し、全通した。

 大垣駅の樽見鉄道乗り場に停車中の車両に乗り込み、自転車を入れた輪行袋を車内に固定した。窓口で買った1日フリー乗車券は、使用日をスクラッチする形式となっていて珍しい。自転車(12kg)を担いで大垣駅の構内を歩いてきたから、まさに肩の荷が下りた気分で一息ついた。

 大垣駅を出るとしばらくはJR東海道本線と並行するように進むが、東海道本線との別れ際、揖斐川を渡る。列車はディーゼルの息を切らして盛り土を駆け上がり、揖斐川橋梁に向かっていく。この緑色の橋梁は樽見線で最初の見どころだが、実は神奈川県の御殿場線から転用されてきたものらしい。橋の途中でトラスの形が変わるのは、御殿場線の複数の橋梁を繋げ合わせたからである。開業に向けて工事が進んでいた樽見線が、戦時にその建設を凍結されてしまい、建設途中だった橋は撤去されてしまった。一方、同じく不要不急路線とされた御殿場線は複線から単線に「降格」され、要らなくなった資材が戦後樽見線に流用されたという背景がある[2,3]。

 東海道本線と別れた樽見線は濃尾平野の田園を北上する。車窓の進行方向左手には柿の低木が果樹園をなしている。よく見ると緑色の未熟な柿が実り始めている。時期は9月の中旬、まだ夏の日差しが照り付ける日もあるが、駅のホームでも涼しい風を感じることが多くなった。ますます秋が深まって、柿が赤くなる季節がやってくる。今年も柿を食べるのが楽しみになった。 樽見鉄道沿線は柿の栽培が盛んらしい。美江寺駅(瑞穂市)の近くにある瑞穂市居倉は富有柿の品種選抜が行われた「富有柿発祥の地」であり[4]、糸貫駅(本巣市)の近くには「道の駅富有柿の里いとぬき」がある。

 線路沿いに立地する大型ショッピングモール・モレラ岐阜は楽しそうである。モレラ岐阜駅で乗降する旅客も多く、特に学生の利用者が多い。樽見鉄道本社がある本巣駅を過ぎると山並みが正面に迫ってきて、織部駅を経て樽見線の旅は違うステージに突入する。いよいよ、濃尾平野の端に至り、そこからは険しく深い根尾谷へと入っていく。

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