ガイドブックのある旅 和歌山県田辺市

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 紀伊田辺駅に着いたのは14時過ぎだった。駅前は昔と比べてかなり変わった気がする。まず、駅舎が変わった。紀伊田辺駅舎はかつて洋風の木造駅舎(1932年建設, 前ページの写真)を留めていたのだが、2018年に耐震性の不足と維持の困難のために新しい駅舎に建て替えられた。晩年の旧駅舎は、JRきのくに線のアートイベント「きのくにトレイナート」の一環としてカラフルなペイントに彩られていた。

 そして、駅前の商店街にあったアーケードも新しくなった。「田辺のたのしみ」p.44には「銀ちろ」という日本料理店が紹介されているが、昔はこの商店街の入り口付近にも店があった。通院の際にはよく駅前店に連れてきてもらっていた気がする。今にして思えば贅沢させてもらっていたのだなと思うが、ここの天丼の味は忘れがたいものがある。田辺に関する最初期の記憶が正しければ、その近くにはドムドムバーガーもあったはずだ。いまでも神戸などでドムドムバーガーを見かけると、懐かしく感じる。なくなった店もあるが、変わらず残る店も多い。電車待ちの時間に入ったおもちゃ屋さんが今も在るのはうれしい。木のボールを複雑な3次元曲線のレールに転がして遊ぶおもちゃで遊ばせてもらったことがある。

 寺社にある梅をメジロがついばむ姿なども見られ、紀州の春の訪れを感じる温暖さであった。冬の格好をして出てきたので暑く、何か冷たいものが食べたい。「ララ・ロカレ」([1] p.66)に向かってアイスティーを飲んだ。このお店の建物は昭和24年築の洋館を改築したものであるが、民家と商店と役所が入り乱れた田辺の城下町にあり、辿り着くまでに道に迷った。通院の際は、基本的に駅と病院を往復する感じであったから、城下町の格子状の道をあまり歩いたことがない。熊野古道大辺路はこの街中を通り、石標などもある。地元でお正月などに食べていた蒲鉾「たな梅」([1] p.36)のお店もこの城下町にあった。他にも複数老舗の練り物のお店が軒を連ね、城下町であるのと同時に港町としての雰囲気を感じる。

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